本記事では
「事業が軌道に乗ってきてそろそろ税金について考えるフェーズになってきた」
という方を対象に車を購入して節税するメカニズムやポイントについて解説します。
ぜひ最後までお付き合いください。
節税の仕組み
自動車を購入すると車両本体代金はもちろん、維持費として
- ガソリン代
- 保険料
- 税金
- 駐車場代
- 備品代
がかかってきますが、これら全て経費として計上できます。経費として計上できるということは所得が減りますので、結果節税となります。
また個人事業主の場合、所得が減ると税率が低くなるケースもあります。以下の所得税速算表をご覧ください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~194万9千円まで | 5% | 0円 |
195~329万9千円まで | 10% | 97,500円 |
330~694万9千円 | 20% | 427,500円 |
695~899万9千円 | 23% | 636,000円 |
900~1,799万9千円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800~3,999万9千円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります。
所得税は「所得が増えれば税率が高く、所得が減れば税率が低くなる」という累進課税制度が適用されています。
例えば、本来700万円の所得があった個人事業主が事業用として400万円の車を購入した場合、税率は23%→10%となり控除額を含めると税金は以下のようになります。
700×0.23-63.6=97.4
300×0.1-9.75=20.25
その差は約77万円となります。
ただし、当然ながら車購入を経費とするためには「事業で使用する」ことが条件となります。また社長名義で購入した車両を後々会社名義にすることは難しく会社名義で購入する必要があるということも覚えておきましょう。
続いて、具体的な節税方法に移る前に減価償却について触れておきたいと思います。
不要な方は次項までスキップしていただいて結構です。
減価償却
車や機械設備、コンピュータなどの固定資産の購入は事業の運営やそれに伴う収益に結びついているため、その購入費用を定められた年数(耐用年数)に渡って費用化することが許されます。つまり経費として計上できるということです。
この購入費用を耐用年数に基づいて分割して費用化することを減価償却といいます。
なお費用化されなかった残りの金額(購入費用から減価償却費の合計を引いた金額)は決算の際に資産として帳簿に記録します。
そして本テーマである自動車の耐用年数は新車と中古車で異なります。
- 普通自動車:6年
- 軽自動車:4年
中古車の場合、経過年数によって2パターンあります。
法定耐用年数の一部を経過している場合
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
例えば2年8カ月落ちの普通車の場合
(6-2.8)+2.8×20%=3.8年
1年未満の端数は切り捨てとなりこの場合3年です。
法定耐用年数の全部を経過している場合
法廷耐用年数×20%
例えば6年落ち以上の普通自動車の場合
6×20%=1.2年
計算結果が2年以内の場合は「2年」とみなすため耐用年数は2年となります。
減価償却の計算方法
減価償却を計算する方法は定率法と定額法があります。それぞれの特徴や計算方法を見ていきましょう。
定率法
定率法とは固定資産の残存価格を毎年一定割合で減価償却する方法のことです。
初年度に計上される減価償却が最も大きな金額になり、その後は年々償却金額が減少していきます。
定率法の計算方法
残存価格(取得価額-償却累計額)×定率法の償却率
減価償却資産の耐用年数や償却方法に応じて変動する値で国税庁より公表されています。
また算出した減価償却が「償却保証額(取得原価×保証率)」を下回った場合、その年度から終了年まで「改定償却率」を使って計算します。保証率および改定償却率は耐用年数ごとに定められており上記の国税庁HPにて確認できます。
定額法
定額法とは取得資産の法定耐用年数の期間内で毎期均等に減価償却費を計上する方法のことです。
定額法の計算方法
取得価額×定額法の償却率
なおいずれの方法においても事業年度の中途に車を購入した場合は月数按分となります。
定額法の場合の計算式
取得価額×定額法の償却率×車を使用した月数÷事業年度の月数
次に両者の違いを具体例でみてみましょう。
両者の違い
例えば、新車の普通車を500万円で期首に購入したとしましょう。
定額法
取得価額×定額法の償却率
1年目
5,000,000×0.167=835,000
2年目も同様です。
5,000,000×0.167=835,000
このように定額法では毎期一定額を減価償却していきます。
定率法
残存価格(取得価額-償却累計額)×定率法の償却率
償却保証額=5,000,000×0.9911=495,550円
1年目
5,000,000×0.333=1,665,000円 残存価格3,335,000円
2年目
3,335,000×0.333=1,110,500 残存価格2,224,445円
というように初年度が最も金額が高く、その後は年々減少していきます。
なお、上記の例で計算していくと4年目で減価償却金額が償却保証額を下回りますので改定償却率を使用します。
1,483,705円×0.333=494,073円<495,550円
1,483,705円×0.334(改定償却率)=495,557円
以上が減価償却の仕組みと計算方法です。次は節税方法についてです。
節税方法は3つ
車を事業で使用し節税する方法は主に以下3つとなります。
- リースを利用
- 社用と自家用を兼用
- 購入
リースを利用
リースとは契約者が選んだ車両をリース会社がディーラーから購入し、契約者がリース会社に月払して利用するというものです。わかりやすく言うとサブスクリプションサービスの形態となります。
なおリース料には車両本体価格や自賠責保険、自動車税が含まれます。このリース会社に月々支払った金額がそのまま費用計上されます。
したがって計算が簡単です。
一方デメリットは一般的に3~5年である契約期間は中途解約不可であり、解約する場合は多額の違約金が生じます。また走行距離に制限があり、超過した場合は追加料金が発生します。
社用と自家用を兼用
新しく車を購入したり、リースを利用するほど資金に余裕がないけど節税したい場合は自家用と社用を兼用するという方法もあります。
自家用車を社用車に転用して節税
自家用車を社用車に転用すれば新たな購入資金を準備する必要がありません。
ただし、車の帳簿価格は購入時のものではなく取得価額から自家用として使用していた分の減価償却額に相当する金額を差し引かなければなりません。
また「車を業務で使用している」ということを明確にするため車名義を個人から法人に変更するのがよいとされています。
家事按分
家事按分とは兼用している車両の業務用として使用している部分のみ経費にするという考え方です。
例えば自家用:業務用が50:50であれば車にかかる費用の内半分が経費となります。
では何を基準に業務用とするのかとなるわけですが、按分の方法に規定がなく自己申告によります。按分には「走行距離」と「日数」を基準にする方法がありますが走行距離を基準とすることが一般的です。
例えば「全体の走行距離は1000㎞で内500㎞を業務で使用したため5:5に按分」となります。
社用車を購入
車の購入方法は一括かローンになるかと思いますが、一括の場合は先に説明いたしました減価償却の計算方法に基づいて処理していきます。
ローンで自動車を購入した場合は、現金購入と同様に購入費用を固定資産に計上し、ローンを長期未払金に計上します。そして毎月ローン返済するごとに負債を減らします。
ローン購入した車両は減価償却をする必要があり経費として計上できます。また支払利息につきましても同様に経費計上でできますが、ローンの元本返済部分は経費として計上できません。
4年落ちの中古車がおすすめ
減価償却の項にてご説明さしあげた通り、中古車は新車より耐用年数が短く設定されています。
したがって同じ金額で車を購入したと仮定すると、中古車のほうが早期に経費として計上できる金額が新車より多いということになります。また耐用年数が2年の場合、定率法の償却率は「1.000」であるため購入した事業年度に全額費用計上できるというわけです。
(6-4)+4×20%=2.8
1年未満の端数は切り捨てですから「2」となります。
このように耐用年数が「2」となるのは4年落ちからとなります。
- 事業年度の中途に車を購入した場合は月数按分となり、減税額が減少しますので決算月の翌月に購入する
- 購入後に修理・改造した額が新車購入価格の50%を超えると耐用年数が6年となり減税額が減少する。
【後のことも】リセールバリューの良い車と悪い車
先々、下取や売却するときのことを考えると気になるのは購入する車のリセールバリューです。
リセールバリューとは車を手放すときにどの程度の価値があるかを示す指標のことで、新車購入時から売却価格が下がりにくい車を「リセールの良い車」逆の場合は「リセールの悪い車」といいます。ただしリセールバリューは新車納期、需要、仕様変更によって変動しますのであくまで「現状」の数値となります。そのため想定よりリセールが「良かった」「悪かった」ということは十分にあり得ます。
ただ売却益に譲渡所得として税金がかかるケースもあるため注意が必要です。
車の売却益
会社で車を所有している場合、通常は購入価額が固定資産として計上され、耐用年数に応じて減価償却していくのは先にご説明した通りですが、まだ減価償却していない残りの金額が帳簿価格(簿価)となります。そしてこの簿価をベースに売却損益の計算をします。以下をご覧ください。
売却金額-帳簿価額(購入価額-減価償却費)=売却益
例:2022年1月に4年落ちの中古車300万円を購入し2024年1月に200万円で売却。
200万円-(300万円-300万円)=200万円
「累計減価償却額が多ければ売却益も多く、累計減価償却額が少なければ売却益も少なく」なります。
上記のケースでは全額減価償却費として計上しているため簿価は1円となり売却益の200万円が全て売却益となります。
つまり実際には売却益を車の買い替えや残債に充てるなど、お金の動きがないように思えますが、このように「売却益が発生することがある」ということです。
あくまで「節税」だけを考えるとリセールの悪い車のほうが効果的だと言えます。例えばベンツのSクラスやBMの7シリーズなどです。ただ、これらを踏まえて申し上げますがリセールの良い車のほうが良いと思います。税金は増えますが入ってくるお金も増えるからです。
具体的にどの車種が狙い目かやリセールの見通しなどは先にお伝えしました通り流動的であるため、ここには記しませんがご相談いただければ詳しくご説明いたします。
なお当社ではBMW MINIやSUZUKIジムニーシエラを中心に扱っておりますが輸入車を含めその他国産車の販売、資産目的のご相談も承っております。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。